BtoB ECとは?市場規模・導入メリット・ビジネスモデルを徹底解説

1. BtoB ECとは?基本概念と市場の現状

BtoB ECの定義とBtoC ECや受発注システムとの違い

BtoB EC(企業間電子商取引)とは、企業同士がオンライン上で商品やサービスを売買する仕組みです。

一般消費者向けの**BtoC EC(企業対消費者の電子商取引)**とは異なり、取引額が大きく、契約ベースでの価格設定や長期的な取引関係が特徴です。また、購買の意思決定には複数の部署や担当者が関わることが一般的です。

従来のBtoB取引では、FAXや電話、対面営業を通じた受発注が主流でした。しかし、デジタル化の進展により、BtoB ECプラットフォームやEDI(電子データ交換)を活用したオンライン取引が急速に広がっています。これにより、受発注業務の効率化、リアルタイム在庫管理、取引コスト削減などのメリットが生まれ、業務全体の最適化が進んでいます。

また、受発注システムとの違いも押さえておくべきポイントです。

受発注システムは企業間取引を電子化する仕組みですが、特定の取引先に限定されたクローズドな環境で使われることが多いです。一方、BtoB ECはより広い範囲の取引先と商取引ができるオープンなプラットフォームであり、新規取引先の開拓にも役立ちます。

BtoB EC・BtoC EC・受発注システムの違い(比較表)

項目BtoB ECBtoC EC受発注システム
対象企業間(法人向け)一般消費者(個人向け)企業間(既存取引先)
取引規模大口・小口(ロット単位など)小口(単品購入)大口(契約ベース)
取引関係長期契約、継続的な取引が多い単発購入が主流既存取引先との継続取引
価格設定個別見積もり、契約価格一律価格、割引キャンペーン契約ベースの価格設定
決済方法掛け払い(請求書)、銀行振込、クレジット決済クレジットカード、コンビニ決済など銀行振込、EDI決済
主な利用業種製造業、卸売業、建設業、医療機器、IT機器などアパレル、家電、食品、日用品など製造業、流通業、小売業、BtoB向け商社
運営形態自社ECサイト、マーケットプレイス(Amazon Business等)ECサイト(楽天、Amazon、Shopify)既存システムとの連携が主
特徴取引量が多く、効率的な受発注管理が可能消費者向けの販促やブランディングが重要クローズドな取引先専用のシステム

例えば、製造業では部品や原材料の調達、卸売業では小売店への商品供給、建設業では資材の発注など、BtoB ECの導入により業務の効率化とコスト削減を実現している企業が増えています。特に、大量発注や定期購入を必要とする企業にとって、BtoB ECの導入は競争力を高める大きな要因となっています。

BtoB EC市場規模と成長予測

経済産業省が公表した「令和5年度電子商取引に関する市場調査」によれば、2023年の日本国内のBtoB-EC(企業間電子商取引)市場規模は、465兆2,372億円に達し、前年(420兆2,354億円)から10.7%の増加を示しました。また、EC化率は40.0%となり、前年から2.5ポイントの上昇となっています。

製造業全体のEC市場規模は 4,652,372億円(約465兆円) に達し、前年比 10.7%増 の成長を記録しました。特に以下の分野で成長が顕著でした。

食品業界、電気・情報関連機器業界、輸送用機械業界は前年比か増加しています。

製造:食品業界

2019年2020年2021年2022年2023年
EC市場規模(億円)266,010264,672271,027296,443355,307
EC化率59.3%63.3%67.2%70.7%75.0%

建設・不動産業

2019年2020年2021年2022年2023年
EC市場規模(億円)182,680195,944208,558234,598271,277
EC化率12.0%13.1%14.3%15.2%16.9%

製造:繊維・日用品・化学

2019年2020年2021年2022年2023年
EC市場規模(億円)333,700322,621376,509447,337451,456
EC化率40.7%45.7%47.9%49.9%52.4%

製造:鉄・非鉄金属

2019年2020年2021年2022年2023年
EC市場規模(億円)212,780202,892252,529286,620309,151
EC化率38.1%40.5%42.7%44.1%46.2%

製造:産業関連機器・精密機器

2019年2020年2021年2022年2023年
EC市場規模(億円)212,780202,892181,284207,734221,639
EC化率35.1%38.3%40.7%42.0%44.6%

製造:電気・情報関連機器

2019年2020年2021年2022年2023年
EC市場規模(億円)365,140349,740391,121207,734221,639
EC化率57.9%61.1%64.2%66.3%69.6%

製造:輸送用機械

2019年2020年2021年2022年2023年
EC市場規模(億円)523,620480,963542,170588,775735,495
EC化率67.0%70.7%74.3%76.7%80.6%

卸売業のEC市場規模は 1,212,499億円 となり、前年比 7.4%増 の成長を見せました。EC化率も 37.5% → 40.0% と上昇しており、商取引のデジタル化が着実に進行しています。

卸売業

2019年2020年2021年2022年2023年
EC市場規模(億円)1,026,450920,9441,006,0591,128,7941,212,499
EC化率28.8%30.6%32.3%34.9%37.5%

近年、企業間取引の電子化が進展しており、EC化率も年々上昇しています。2023年のEC化率40.0%は、前年の37.5%からの上昇を示しており、企業間取引の約4割が電子商取引を通じて行われていることを意味します。この傾向は、今後も続くと予想され、BtoB-EC市場はさらに拡大していくと考えられます。

出典:経済産業省「令和5年度 電子商取引に関する市場調査 報告書」

BtoB ECサイトの種類:3選

BtoB ECには、大きく分けて以下の3つのビジネスモデルがあります:

1. 自社ECサイト型(カタログ型)

自社の商品やサービスを直接取引先に販売するためのECサイトを構築・運営するモデルです。特定の取引先向けに価格や納期、支払い条件などをカスタマイズでき、自社ブランディングも強化できます。

成功事例:株式会社MISUMIは、工業用部品の調達プラットフォーム「MISUMI-VONA」を運営し、3D CADデータのダウンロードや即日出荷サービスなど、顧客ニーズに特化したサービスを提供しています。

2. マーケットプレイス型

複数の企業(出品者)と購入者が集まる場を提供するモデルです。Amazon Businessやモノタロウ、アスクルなどがこれにあたります。出品企業にとっては新規顧客獲得のチャンスとなり、購入企業にとっては複数の企業から最適な調達先を選べるメリットがあります。

BtoB ECプラットフォーム:比較表

サービス名特徴商品数支払い方法
モノタロウ製造業や建設業向けの資材や工具を中心に、オフィス用品も取り扱い。1,800万点以上の商品を問屋価格で提供。1,800万点以上請求書払いなど法人向けの支払い方法に対応。
アスクル事務用品からオフィス家具、医療用具、工事用具まで幅広く取り扱い。オリジナル商品も展開。365日以内であれば返品・交換が可能。900万点以上月1回のまとめ払い(10日締めまたは月末締め)で、コンビニ、郵便局、銀行振込、口座振替、法人カード、クレジットカードなどに対応。
たのめーる事務用品やオフィス用品、PCや家電、工具、日用品など幅広く取り扱い。200万点以上請求書払いなど法人向けの支払い方法に対応。
アマゾンビジネスAmazonの法人・個人事業主向けサービス。個人向けAmazonと同様の品揃えに加え、ビジネス向け商品も多数取り揃え。数億種類クレジットカード、デビットカード、コンビニ、ATM、代金引換、一部のネットバンキングおよび電子マネー、法人向けクレジットカード、請求書払いなど多様な支払い方法に対応。

3. プライベートマーケットプレイス型

「プライベートマーケットプレイス型」とは、特定の企業グループや取引先ネットワーク内でのみ利用できるBtoB ECプラットフォームのことです。一般的なオープンなマーケットプレイスとは違って、登録された企業・サプライヤー・バイヤーのみが取引できるクローズドな仕組みになっています。

プライベートマーケットプレイス型の事例:ミスミ(MISUMI)

ミスミは、FA(ファクトリーオートメーション)部品、金型部品、工具などを提供するBtoB ECサイトで、製造業向けの調達を効率化するプラットフォームを運営しています。

特に「プライベートマーケットプレイス型(PMP)」の特徴を持つECモデルを採用し、企業ごとのカスタマイズや特定のサプライチェーンに最適化された取引環境を構築しています。

BtoB ECサイト構築にあたる選択肢とは

BtoB ECサイトを構築する際には、目的や予算、運用体制に応じて以下の3つの方法から選ぶのが一般的です。それぞれにメリット・デメリットがあるため、事業規模や業務要件を考慮した上で最適な方法を選ぶことが重要です。

1. パッケージ型ECプラットフォーム

パッケージ型ECプラットフォームは、あらかじめ用意されたECシステムを導入する方法です。標準機能が充実していて、初期コストを抑えつつ、短期間での立ち上げが可能な点が大きなメリットです。

一方で、システムの仕様が決まっているため、独自の業務フローに合わせた細かなカスタマイズには制限がある場合があります。

2. フルスクラッチ開発

フルスクラッチ開発は、ゼロから独自のBtoB ECシステムを構築する方法です。

自社の業務フローや要件に完全に適合したシステムを構築できるため、独自の商習慣や特定の機能要件がある企業に最適です。

ただし、開発コストと期間が大きくかかるため、システムのROI(投資対効果)を十分に検討する必要があります。

3. ヘッドレスコマース

ヘッドレスコマースは、フロントエンド(UI)とバックエンド(機能)を分離し、APIを介して連携するアーキテクチャです。

これにより、ECサイトだけでなく、モバイルアプリやIoT機器など複数のチャネルで統一した購買体験を提供できるのが特徴です。

特に、オムニチャネル戦略を重視する企業や、UIの自由度を高めたい企業に適した選択肢です。

4. BtoB ECに必要な主要機能

BtoB ECでは、BtoC ECとは異なり、企業間取引に特化した機能が求められます。

法人向けの取引では、価格設定や契約形態、決済方法、承認フローなどが企業ごとに異なるため、BtoB特有の機能を備えたECシステムを導入することが重要です。

これらの機能が不足していると、取引の手間が増え、業務の効率化が進まないため、慎重に選定する必要があります。

以下に、BtoB ECサイトに求められる主要な機能を整理しました。

機能カテゴリ概要主な機能
企業ごとの価格設定・契約管理取引先ごとに異なる契約条件や価格設定に対応– 取引先ごとに異なる価格・数量割引の設定- 企業ごとの特別契約(定期購買・卸価格)への対応
受発注システム(ERP・基幹システム)との連携業務効率化のため、既存の基幹システムとのデータ連携が不可欠– 受発注データの自動反映(SAP、Oracle、freee、弥生など)- 在庫管理システムとのリアルタイム連携- EDI(電子データ交換)との統合
承認ワークフロー発注内容を上長や購買部門が承認する仕組みが必要– 複数階層の承認プロセス(役職別承認フロー)- 予算上限・発注可能商品リストの制限
与信管理・後払い決済BtoB取引特有の掛け払い(後払い)や与信管理に対応– 与信審査(取引開始前の信用チェック)- 掛け払い(銀行振込・月末締め支払い)- 電子請求書の発行
見積書・納品書・請求書の自動発行商取引に必要な各種帳票を自動発行し、業務負担を軽減– 見積書のオンライン発行(カート内の見積機能)- 請求書・納品書のPDFダウンロード
定期購買・契約ベースの取引管理継続購買や定期注文をスムーズに行える仕組み– 定期購入(毎月・毎週などの自動発注)- 取引履歴の管理・再注文機能

BtoB ECで解決できる課題

企業の成長を加速させるためには、販路の拡大業務の効率化という2つの視点から、適切な解決策を見つけることが重要です。

BtoB ECは、従来の営業手法や業務プロセスの課題を解決し、新たな成長機会を生み出すための有力な手段となります。

販路拡大

  • 新たな市場へのアプローチ:地域に依存せず、全国・海外の取引先とスムーズに商談が可能。
  • 競争優位性の確立:データ分析を活用し、価格競争に巻き込まれないブランド戦略を展開。
  • 小口取引の最適化:ECサイトでの注文受付により、営業負担を軽減しながら機会損失を防ぐ。

業務の効率化

  • 商品開発の強化:顧客データを活用し、市場ニーズに即した商品戦略を構築。
  • 営業活動の最適化:CRMと連携し、見込み顧客へのアプローチやフォローを効率化。
  • ノンコア業務の削減:受発注・請求・在庫管理を自動化し、人的リソースをコア業務に集中。

BtoB EC導入のメリットとは

  1. 業務効率化と人的コスト削減:オンライン受発注により、従来のFAXや電話による発注業務が自動化され、ミスや重複作業が減ります。
  2. 24時間365日の注文受付:営業時間に縛られず、取引先が必要なときに発注できるため、機会損失を防げます。
  3. データ分析による意思決定の最適化:取引データをリアルタイムで分析できるため、在庫管理や販売戦略の改善が可能になります。
  4. 新規取引先の開拓:地理的制約なく全国・世界中の企業との取引が可能になり、販路拡大につながります。
  5. 購買プロセスの透明化:承認フローや予算管理が可能なため、不正購買の防止や調達コストの最適化が図れます。

まとめ:BtoB ECが企業の競争力を左右する時代へ

BtoB ECは、単なる受発注のオンライン化ではなく、企業の業務効率化取引先管理サプライチェーンマネジメントを最適化するための重要な戦略的ツールとなっています。デジタル化が進む現在のビジネス環境において、適切なBtoB ECプラットフォームの選定と戦略的な活用が、企業の競争力を左右する重要な要素となっています。

企業は自社の業種特性や取引先のニーズをしっかり分析した上で、最適なBtoB EC戦略を構築し、継続的な改善を行うことが成功への鍵となります。技術の進化とともに進化を続けるBtoB ECの最新トレンドをキャッチし、自社のビジネスに積極的に取り入れていくことで、企業はデジタル時代における持続的な成長を実現できるでしょう。